リスケジュールのメリット・デメリット!成功率はどれ位?

銀行融資のリスケジュールはどんな流れで進むのか?メリット・デメリットはなにか?といった疑問をお持ちではないでしょうか。

リスケジュールは、資金繰り改善のための1つの手段ですが、メリットがある一方で、その後の経営に少なくない影響を与えるため注意点もあります。

中小・零細企業の経営者のためのリスケジュールの基礎知識をわかりやすくまとめました。ぜひご参考になさってください。

銀行融資のリスケジュール(借入条件の変更)とは

リスケジュールを一言でいうと、銀行融資の返済期間の見直しや返済金額の減額を行うことです。

銀行からの借り入れは事業を伸ばしていく上で強い武器になりますが、資金繰りが厳しくなり、毎月の返済が困難になってしまうケースがあります。

そこで事業再編をするために返済をちょっと待ってくれないか、または返済額を少し抑えてくれないかと銀行に頼み実行してもらうことをリスケといいます。

一口にリスケジュールといっても、リスケの内容は様々です。

大きく分けると以下の3つに分類できます。

リスケジュールの3つの効果

  • 据え置き期間の設定
  • 返済期間の延長・猶予
  • 返済額の減額

お金を貸してくれた銀行がこんな条件を飲んでくれるのかと思うかもしれませんが、銀行からみて最もリスクとなるのは、貸し倒れとなって資金回収ができなくなることです。

このまま融資返済が負担となって倒産するよりは、返済を待って事業が立て直せるのであれば銀行側としてもそちらの方が良いのです

リスケジュールの利用状況と申請後の実行率はどれくらい?

それでは、リスケジュールの実施状況・承諾率はどれくらいなのでしょうか。

ここでは、中小企業庁が発表した「貸付貸付条件の変更等の状況について(平成29年4月から平成30年3月末までの実績)」のデータをご紹介します。

※表は横にスクロールできます。

金融機関 申し込み 実行 謝絶 取下げ 実行率
主要行等 85,384 81,649 2,295 1,453 95.6%
地域銀行 377,644 365,720 5,488 5,450 96.8%
その他の銀行 922 923 17 25 100.1%
信用金庫 289,161 283,202 2,722 4,053 97.9%
信用組合 40,657 39,969 120 564 98.3%
労働金庫 0 0 0 0
信農連・信漁連 1,346 1,326 3 6 98.5%
農協・漁協 5,347 5,334 7 14 99.8%
合計 800,461 778,123 10,652 11,565 97.2%

貸付条件変更の承認率は全体で「97.2%」でした。

リスケジュールの承認率はそれほど低くないことが分かります。

リスケジュールのメリット

企業がリスケジュールを行うメリットは以下の2点です。

  1. 資金繰りが楽になる
  2. 延滞・遅延扱いにならない

詳しく解説します。

メリット①:資金繰りが楽になる

1つは、資金繰りが楽になることです。

例えば、毎月200万円の返済をしなければならない状況だとすると、リスケを実施して1年間支払いを待ってもらえれば、年間で2,400万円のお金が浮きます。

この資金を運転資金や設備投資など他の事業投資に回すことができるのです。

もちろん、永久的に返済猶予されるわけではないので、あくまで延命治療的な措置ですが、経営再建の第一歩としては重要です。

メリット②:延滞・遅延扱いにならない

リスケジュールを行い返済期間の延長・猶予、減額を行なった場合、支払いをしていない期間や金額は延滞・遅延扱いになりません。

返済ができないからといって銀行に何の通知もせずに返済をストップすることだけは避けましょう。

こうすると銀行側は預金の差し押さえや強制執行といった法的措置を手がけます。こうなると倒産にさらなる拍車をかけてしまいます。

リスケジュールを実行すれば、その期間中、金融機関が法的な手段を執ることはありません。

リスケジュールのデメリット・リスク

一方でリスケジュールのデメリットやリスクについても理解しておく必要があります。

デメリットは、下記の3点です。

  1. 新規融資が受けられない(信用格付けが下がる)
  2. 保証付き融資のリスケは他行の借入も困難になる
  3. 経営者に精神的なプレッシャーがかかる

それぞれ詳しく解説します。

デメリット①:新規融資が受けられない(信用格付けが下がる)

リスケを行うと銀行の信用格付けが下がります。

信用格付けとは、企業ごとの信用状況・信用力を評価した金融機関側の格付けです。

銀行の信用格付けは以下のランクがあります。

【銀行の信用格付け】

債務者(企業)区分 格付け 内容
正常先 リスクなし:上場企業のみ 業績良好・財務状況も問題ない
ほぼリスクなし:上場企業のみ
リスクほぼなし:その他企業
要注意先 リスクはあるが良好 金利の減免・減額をしている、返済履行状況に問題がある
リスクはあるが平均的
リスクは高いが許容範囲
リスク高く、要注意
破綻懸念先 警戒 経営難で経営改善状況も悪い
実質破綻先 延滞 法的には経営破綻していないが、実質経営難
破綻先 事故 法的に経営破綻している状態

デメリット②:保証付き融資のリスケは他行の借入も困難になる

ベンチャー・中小企業は、銀行のプロパー融資が難しいため、信用保証協会の保証付き融資を実施されている方も多いと思います。

保証付き融資でリスケジュールをした場合、信用保証協会からの信頼が落ちるため、借り入れ先の金融機関だけではなく、他行からの借り入れも難しくなってしまいます。

【関連記事】信用保証協会の保証付融資とは?金利や審査の流れを解説

デメリット③経営者に精神的なプレッシャーがかかる

リスケジュール実行がクライアント企業や自社の社員・スタッフなど外部に漏れてしまえば、取引先がなくなる、人材が離れていくなど甚大な被害を被る可能性があります。

そのため、リスケを実行していることは金融機関と経営者の中だけで止めておく必要があります。

リスケ中に何としても経営改善をしなければならないプレッシャーの中、そのことを外部に漏らさず1人で戦わなければならない状況は、やはり経営者の負担となるでしょう。

【関連記事】銀行融資リスケ中に資金調達するための6つの方法【即日可能】

経営者が覚えておきたいリスケジュール(リスケ)の注意点

ここで上記のメリット・デメリットの他にリスケジュールを検討している経営者が事前に覚えておきたい注意点を2つ解説します。

支払い猶予期限は最長でも1年まで

1回のリスケジュールの期間は、最長でも1年です。その後、リスケジュール期間を更新する場合は、事前に銀行に共有した経営改善計画通りに事業運営できている必要があります。目安としては80%程度と考えてください。

それを下回るようだと銀行はリスケジュールに応じてくれず、不良再建としてサービサー(債権回収業者)へ債権を譲渡します

その後の資金回収は銀行ではなく、サービサーが実行するため、取り立てはより厳しくなります。

複数の金融機関と取引がある場合は全銀行でリスケ実施

1行だけではなく、複数の金融期間から借り入れを行なっている場合はどうなるのでしょうか?

リスケジュールは借り入れ先1行だけで実施することはできず、申し込みは全ての借り入れ先銀行で行わなければいけません

銀行とのリスケ交渉の際も他行のリスケ申請状況を聞かれますので注意しましょう。

リスケジュールの流れ【申請から実行まで3〜6ヶ月】

実際にリスケジュールを行う際の手順を解説します。手順は大きく以下の4ステップです。

  1. 資産処分・事業口座の変更・資金移動などの準備
  2. 企業再建の事業計画書・資金繰り表の作成
  3. 銀行との交渉・審査
  4. リスケ実行

 

STEP1.資産処分・事業口座の変更・資金移動などの準備

金融機関にとって、リスケジュールは最終手段です。もし返済に回せる資産があるのにリスケを申請したとしても、銀行からすると資産を処分して資金作れないの?もっと他に手段はないの?ということになります。

そのため、まずは不動産や生命保険等の担保があれば全て処分をする必要があります。

また、借り入れ先の口座を事業で利用している場合、最悪だとリスケ申請によって危機感を覚えた銀行が預金ロックをして、資金が枯渇してしまう可能性があります。

リスケ前には、こうしたリスクも踏まえて融資を受けていない銀行口座へ資金移動をしておきましょう。

STEP2.企業再建の事業計画書・資金繰り表の作成

実際に銀行へリスケ交渉をいく前に具体的な経営再建案を作成します。

「どのようにリスケ中に事業再建するのか」

銀行担当者が見るのはこの1点です。

経営計画改善書と共に試算表や資金繰り表も一緒に作りましょう。

作成方法が分からない場合は、日本政策金融公庫の経営改善計画書のフォーマット・記入例を参考にすると良いでしょう。

ステップ3.銀行との交渉・審査

書類を準備したら担当者にアポをとり、現状と今後の改善策を伝えます。

リスケの交渉・審査には短くても1ヶ月以上はかかるので、資金ショートの可能性が生じたら早めに動きましょう。

ステップ4.リスケ実行

リスケジュールを承認されたら、経営再建に向けて事業再編に取り組みます。あくまでリスケジュールは、応急措置にすぎず、根本的な解決はされていません。

また、定期的に銀行へ経営改善計画の進捗状況を報告する必要があります。承認後に気を抜かず、ここからがスタートだと思い、経営を立て直していきましょう。

リスケジュールのメリット・デメリットまとめ

今回は、銀行融資のリスケジュールの基礎知識やメリット・デメリット、注意点を解説しました。

改めて、リスケジュールのメリットとデメリットをまとめます。

  • メリット①資金繰りが楽になる
  • メリット②延滞扱いにならない
  • デメリット①新規融資が受けられない(信用格付けが下がる)
  • デメリット②保証付き融資のリスケは他行の借入も困難になる
  • デメリット③経営者に精神的なプレッシャーがかかる

本当に資金繰りに窮した場合、リスケジュールが経営再建に必要になるケースもありますが、気軽にとるべき手段ではなく、経費削減など最大限の努力をした上で実行する最終手段だと考えた方が良いでしょう。

また、前述した通り、リスケジュールには申請から承認までにある程度の期間が必要です。

リスケ交渉のタイミングも間違えないように知識をインプットしておいてください。