正しい借用書の書き方と金銭トラブルを防ぐ方法

今回は、正しい借用書の書き方をわかりやすく解説します。

いざという時に助けてくれる家族や知人でも、お金の貸し借りに関するトラブルは人間関係を悪化させかねません。

こうした金銭トラブルの多くは、借用書を作らず口約束だけで貸し借りをすることが原因となっています。

親しい間柄だからこそ、余計なトラブルに発展させないために借用書を作っておくことは重要なのです。

本記事では、借用書の基本的な書き方や書面に残しておきたいポイント、注意点を解説します。

※借用書には、借り手が作成して貸し手が保管する「借用書」と、双方で作成し、両方が保管するのが「金銭消費貸借契約書」の2種類ありますが、今回は、便宜上区別せずに同じ「借用書」として取り扱っていきます。

個人間のお金の貸し借りで借用書はなぜ必要?

書き方に入る前に、まずは借用書の必要性についておさらいしていきましょう。

銀行や消費者金融などの金融機関・ノンバンクからお金を借りる際には必ず契約書を結びますが、個人間(親・夫婦・友人etc)のお金の貸し借りでは契約書を書く場面はそう多くありません。

なぜ個人間の金銭貸借でも借用書が必要なのでしょうか。

口約束だけでも金銭貸借契約は成立!ただしトラブルの原因に

実は、日本の法律では口約束だけでも金銭貸借契約が成立します

例えば、「10万円貸すね」「わかった。必ず返すね」というやりとりをした時点で、借りて側には返済義務が発生するのです。

しかし、法律で決まっているからといってトラブルが起きないかというとそんなことはありません。

特に返済日・返済方法・返済金額・金利の有無等はしっかりと書面に残しておかないと、貸し手と借り手の間で認識のズレが生まれてしまいます。

こうしたことから、

  • 貸したお金を全額返してもらってない
  • 当初の取り決め以上の利息を請求されている

といったトラブルに発展しやすいため、借用書という形で証拠を残しておくことが必要なのです。

私文書は公文書より法的効力が弱いが、裁判の証拠になる

借用書には大きく2種類あります。「公文書」と「私文書」です。

公文書とは、公証役場の公正証書など公的機関が作成した書類。私文書は、当事者で作った書類です。

公文書は、強い法的拘束力をもちます。万が一、借主から返済が滞った場合は裁判所を通さずに借金を取り立てることができます。

一方、私文書にはこのような強制力はありません。

しかし、貸主と借主の間で裁判に発展した場合は、私文書であっても重要な証拠になります。

金額が多額になる場合や疎遠な人からお金を借りる場合は、公文書を使う機会もあるかもしれませんが、家族や知人から借りる場合には、私文書で対応することが多いです。

正しい借用書の書き方と9つのコツ【テンプレート付き】

正しく借用書を書くためのポイントを解説します。

テンプレートは以下から確認できます。

ポイントは下記9点です。

  1. 借用書に記入する基本項目(金額・利息・返済日)
  2. 借用日には借用書の作成日を書く
  3. 作成はワープロが主流!鉛筆書きはNG
  4. 数字は漢数字(大字)を使い、文字間を空けない
  5. 返済日・金利・返済方法・遅延損害金を明確にしておく
  6. 期限の利益喪失の取り決めをしておく
  7. 署名は直筆で行う
  8. 借入金額に応じた収入印紙を貼る
  9. 捺印は実印で印鑑登録証明書の添付がおすすめ

少し多いですが、どれも重要なことなのでしっかり確認していきましょう。

①借用書に記入する基本項目(金額・利息・返済日)

借用書に最低限必要な基本項目は下記になります。

①タイトル 「借用書」
②貸主の氏名 〇〇様
③貸し借りする金額 金〇〇円也
④金利・実質年利 利息 年○%
⑤返済期日 平成○年○月○日
⑥返済方法 銀行振込(振込手数料は借主負担とする)

期日までに一括返済するものとする

⑦返済が滞った場合の金利 遅延損害金 年○%
⑧作成日 平成○年○月○日 ※金銭受領日と同じ日付
⑨借主の住所・氏名・押印 借主住所 東京都・・・

氏名 〇〇 印

なお、金銭消費貸借契約の場合は⑩借主の住所・氏名・押印の下に貸主の住所・氏名・押印をします。

②借用日には借用書の作成日を書く

金銭を受領した日(借用日)は、原則借用書の作成日を記入します。表記は和暦が一般的です。

また、金銭を受領した事実を残すために現金でのやりとりはせず、銀行振込など形に残るようにしましょう。

③作成はワープロが主流!鉛筆書きはNG

借用書はワープロ、手書きどちらでも問題ありません。

手書きの場合は鉛筆書きはNGです。筆跡を消せる、かつ修正できてしまうからです。

④数字は漢数字(大字)を使い、文字間を空けない】

借用書では数字は漢数字を用います。

これは「1」と「7」のように見分けがつきづらい数字の利用を避けるためという理由と、「1」に書き足し「4」にする等の改ざん防止の2つの理由があります。

参考に漢数字の表をまとめます。

アラビア数字 漢数字(大字)
百、佰
千、仟、阡
十万 壱拾万

また、後から数字の間に別の数字を付け足しできないように、数字の間は詰めて記入します。

【NG:アラビア数字で書いている】

×320,000円

○参拾二万円

【NG:空白がある】

×参 拾二万円

○参拾二万円

⑤返済日・金利・返済方法・遅延損害金を明確にしておく

特に返済についての取り決めは重要です。以下の5点は必ず漏れのないように記載しましょう。

  1. 返済日
  2. 金利(実質年利)
  3. 返済開始日
  4. 返済方法
  5. 遅延時の金利

また、分割返済を行う際は毎月の返済日と返済金額も書面に残します。

⑥期限の利益喪失の取り決めをしておく

「期限の利益喪失の取り決め」というと難しいですが、簡単に説明すると、

  • 万一のことが起きたら、すぐに元金を一括で支払います。

といういざという時の取り決めです。

例えば、

  • 分割金の返済を2回連続で怠った場合
  • 強制執行・仮押さえを受けた場合
  • 民事再生手続・破産の申し立てがあった場合
  • 債務書が振り出し、裏書きした手形に不渡りがあった場合

などのケースがあった場合に一括返済を求める条項になります。

細かいかもしれませんが、後々のトラブルを防止するために事前に不測の事態も考慮しておくことが重要です。

⑦署名は直筆で行う

借用書の署名は直筆で行います

⑧借入金額に応じた収入印紙を貼る

手形・定款・保険証書などの課税文書には収入印紙を貼る必要があります。

借用書に収入印紙が貼ってないからといって、借用書の法的拘束力が失われることはありません。しかし、法律では金銭貸借契約には収入印紙が必須と決められています。

後々収入印紙がないことが判明した場合、過怠税として余計な税金を支払わなければいけませんので、収入印紙を貼るようにしましょう。

収入印紙額は貸借金額によって変わります。

貸借契約 収入印紙額
1〜9,999円 非課税
10,000円〜100,000円 200円
100,001円〜500,000円 400円
500,001円〜1,000,000円 1,000円
1,000,001円〜5,000,000円 2,000円
5,000,001円〜10,000,000円 10,000円
10,000,001円〜50,000,000円 20,000円
50,000,001円〜100,000,000円 60,000円

⑨捺印は実印。印鑑登録証明書の添付がおすすめ

実は押印は契約書成立の必須事項ではなく、押印がなくても契約は成立します。(口頭でも成立します)

ですが、より貸し借りの事実を確かなものとするには「実印」にて捺印するのが良いでしょう。三文判でも良いですが、法的な効力からは実印の方がおすすめです。

さらに実印と共に印鑑登録証明書を添付しておくのが理想的です。

両親や友人からお金を借りる時の金利の決め方は?

個人間のお金の貸し借りとはいえ、法律で決められた上限金利を超えるのはNGです。上限金利は利息制限法で定められています。

通常時の年利と遅延損害金利の上限は下記の通り定められています。

上限金利を超えてしまうと超過利息分は無効になります。

貸借金額 上限金利 遅延損害金の上限金利
10万円未満 20% 29.20%
10万円〜1000万円未満 18% 26.28%
100万円〜 15% 20.19%

なお、利息制限法の上限金利を超えて、さらに出資法の上限金利(年109.5%)を超えてしまうと、5年以下の懲役または、1000万円以下の罰金が科せられます。

また、参考までに一般的なローンの金利相場は下記になります。

  • 自動車ローン 2%〜10%
  • 住宅ローン 1%〜3%
  • 消費者金融カードローン  4%〜18%
  • 銀行カードローン 4%〜15%
  • 教育ローン 2%〜5%

家族間の金銭貸借には贈与税が発生する!?

親や兄弟、親戚、夫婦間でのお金の貸し借りには注意が必要です。

家族同士で金銭の貸し借りを行う時に「返済期日」を設定していないと、金銭貸借ではなく贈与とみなされ、「贈与税」が発生することがあります。

他にも、

  • 返済が困難と思われるあまりにも高額な借金
  • 金銭消費貸借契約書(借用書)のない借金
  • 無利子の借金

などは贈与とみなされる恐れがあります。

正しい借用書の書き方まとめ

今回は、正しい借用書の書き方をご説明しました。

起業時に自己資金が足りない場合には親族からお金を援助してもらうこともあると思います。

ただし、密な仲だからといって口約束だけでお金の貸し借りをしてしまうと、後々になって痛い目をみるかもしれません。

親しき仲こそ礼儀あり、というように正しい借用書を作っておくことはある意味で礼儀ともいれそうです。

本記事の内容が皆さまの役に立てば何よりです。