セールアンドリースバックと呼ばれる資金調達方法をご存知でしょうか。
資金繰りやキャッシュフローに困ったら、資金ショートに陥る前に会社は何としてでも事業資金を確保する必要があります。
そんな時に役立つのが、自社資産を活用することで資金調達ができるセール&リースバックという方法です。
今回は、セールアンドリースバックの仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
企業経営者の方は知っておいて損はない資金調達・ファイナンス知識です。ぜひ最後までご一読ください。
セールアンドリースバックの仕組み
セール&リースバックとは、「自社が保有している不動産・機械・設備機器等の資産を金融機関・リース会社に売却し、買主と改めてリース契約を結び資産を借りる」仕組みです。
一般的な資産売却では、売却時点で資産が手元から無くなりますが、その資産が事業運営に欠かせないモノだったら困ってしまいますね。
セール&リースバックを利用することで、まとまった事業資金を手にすることができ、かつ以前と変わらずに事業を継続することができるのです。
セールアンドリースバックのメリット7点
具体的なセール&リースバックのメリットを7つ見ていきましょう。
メリットは以下の7点です。
- 信用情報や返済力に関係なく利用できる
- 資金使途は自由!事業資金・融資返済・税金支払いOK
- キャッシュフロー改善や財務改善に効果的
- リース料は経費にできて節税効果がある
- 固定資産税・保険料・管理費等のコストが削減できる
- 経営環境を変えずに資金調達できる
- 借入や出資による株の希薄化、負債増加がない
具体的に内容を見ていきましょう。
メリット①:審査が通常の融資に比べてやさしい
セールアンドリースバックを利用する際に最も重要なのは、資産の価値です。
一般的に銀行融資の場合は、会社の信用力が第一なので、資金繰りに困っている会社や債務超過中の会社に貸し出してくれることは少ないのが実状です。
セール&リースバックでは、万が一、リース契約途中で倒産などで支払いができなくなった場合、購入者は資産を再度売却することになります。
逆に、リース会社(金融機関)にすれば、将来的に売却益が出る資産であれば買い取る価値があるということです。
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メリット②:資金使途は自由!事業資金・融資返済・税金支払いOK
融資・借入の場合、資金使途は限定されています。
運転資金や設備資金での利用はOKでも、例えば借入したお金で別の借金返済をしたり、滞納中の税金支払いに充てるのはNGです。
セール&リースバックでは、調達資金の使い道は自由。そのため、税金納付や融資返済につかっても大丈夫です。
メリット③:キャッシュフロー・財務改善に効果的
一時的に事業資金が手に入るのでキャッシュフローや資金繰り改善に繋がるのはもちろん、財務体質の改善も期待されます。
具体的には、ROA(総資産経常利益率)の向上、自己資本比率の向上などが見込めます。これらの経営指標は銀行格付けにも好影響を与えます。
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メリット④:リース料は経費にできて節税効果がある
リースで支払った費用は、基本的に全てその年の経費として計上できるので節税効果があります。
メリット⑤:固定資産税・保険料・管理費等のコストが削減できる
資産の保有には、様々な維持費がかかります。
例えば、固定資産税や保険料、管理費などがあります。
資産売却することで維持コストの削減に繋がります。
メリット⑥:経営環境を変えずに資金調達できる
資金調達を目的として自社ビルを売った場合、移転先を見つける手間や移転コストが発生します。
しかし、セール&リースバックであれば、自社ビルを利用しながらそれを賃貸契約へと変えるだけなので実務上の影響は全くありません。
メリット⑦:借入や出資による株の希薄化、負債増加がない
一般的に資金調達というと借入や投資家からの出資を想像する方が多いと思います。
負債による調達をデッド・ファイナンス、株による調達をエクイティ・ファイナンスと言いますが、これらはいずれも「負債増加」「既存株主の株の希薄化」といった問題が発生します。
セール&リースバックは、アセット・ファイナンスと呼ばれ、上記のいずれの調達方法とも違い、このようなリスクが発生しません。
セールアンドリースバックのデメリット4点
多くのメリットがあるセール&リースバックですが、もちろんデメリットも存在します。
デメリットは以下の4点です。
- 通常の資産売却に比べて割安
- リース料が相場より高い
- リース期間によっては支払い総額が高い
- 買い戻し金額が売却額より高い
具体的に見ていきましょう。
デメリット①:通常の資産売却に比べて割安
セールアンドリースバックによって、資産を売却する場合、通常の買取価格よりも割安になることがほとんどです。
買い主は、売主がリース後に買い戻しできなくなった時に資産を再販売することになります。
資産価値の下がった不動産等を販売して利益を確保するために、最初の買取価格は下げざるを得ないということです。
デメリット②:リース料が相場より高い
リース会社や金融機関によって異なりますが、セール&リースバックを利用したリース契約では、リース料が通常より10〜15%程度割高になります。
デメリット③:支払い総額が高くなる
一時的な事業資金の確保にはぴったりですが、リース契約をしている以上、契約期間によっては、最終的な支払い総額は高くなることを忘れないでおきましょう。
資金繰りにまだ余裕があるのであれば、資産を売却せず継続利用した方が良いこともあります。
デメリット④:買い戻し金額が売却額より高い
リース後に売却資産を買い戻しする場合、売却時の金額より10%程度高くなることが大半です。
セールアンドリースバック利用の流れと必要手続き
実際にセール&リースバックを利用する際の大まかな流れをご説明します。
流れは大きく4ステップです。
- 相談・問い合わせ
- 資産の簡易的な査定
- 面談・現地調査
- 契約・支払い
STEP1.相談・問い合わせ
まずは、リースバックを行なっている金融会社やリース会社に連絡をとり、問い合わせをしましょう。
業者にもよりますが、セール&リースバックでの資金調達は早くても2週間〜1ヶ月程度かかりますので、資金ショート間近になる前に早めに相談しましょう。
STEP2.資産の簡易的な査定
資産の簡易的な査定を行います。早いところであれば数日で査定が出ることもあります。
この査定金額はあくまで簡易的なものなので、最終的な調達金額ではありませんので注意してください。
STEP3.面談・現地調査
面談および現地調査を行い、正式な資産の買取価格を提示してくれます。
資産の正式な査定に加え、リース期間や買い戻し予定、現在の財務状況などのヒアリングも行います。
STEP4.契約・支払い
資産売却と資産を借りる2種類の契約を結びます。
契約締結後に所有権が買い主に移り、購入代金が支払われます。
セールアンドリースバックに関するQ&A
セール&リースバックに関するよくある質問にお答えします。
Q.売却予定資産に抵当権が設定されている場合は?
抵当権が付いている不動産等をセール&リースバックする際、手続きが面倒になります。
- 抵当権付き不動産をセール&リースバック
- 買い主はその不動産を担保に銀行から融資を受ける
- 融資金額を売主に支払う
- 売主は銀行へ繰り上げ返済して抵当権を抹消する
- 売主は買い主にリース料(融資返済分含む)を支払い買い主は銀行へ返済を行う
抵当権付きの資産のセール&リースバックに対応しているかどうかは業者により異なります。
Q.資産の査定にはどれくらいの時間がかかる?
大体2週間〜1ヶ月程度かかります。
もし緊急の入り用で「明日までに資金が必要」「取引先への支払いが1週間後に迫っている」といった場合は、同じ資産売却でもファクタリングの方がおすすめです。
ファクタリングであれば最短即日で資金調達ができますので、気になる方はこちらをご覧ください。
【関連記事】ファクタリングとは?仕組みや種類をわかりやすく解説
Q.売却時に費用は発生する?
セール&リースバックは、売買契約とリース契約の2つの契約を行うためこれらの契約に必要な諸経費が発生します。
例えば、不動産売却に関する費用には、
- 仲介手数料
- 売買契約の印紙代
などがかかります。
しかし、これらの費用は売却代金から支払い可能なので、手出しする必要はありません。
セールアンドリースバックまとめ
セール&リースバックの仕組みや特徴についてお分りいただけましたでしょうか。
セールアンドリースバックは、よく不動産が例に取り上げられますが、それ以外に機械や社用車なども買取の対象になります。
資金繰りに困った際には、自社が持っている資産の中で対象になるものがあるか探しておくといいでしょう。