日本政策金融公庫で追加融資を受ける条件と審査のコツ

日本政策金融公庫で新たに追加融資を検討される方へ本記事を執筆します。

「急ぎで運転資金が必要になった」「手元の現金・キャッシュを増やしておきたい」「店舗拡大のための設備資金がほしい」など理由は様々だと思います。

しかし、創業融資と違い、追加融資では「業績」が審査の最重要ポイントになります。

今回は、創業融資と異なる追加融資を成功させるためのポイントを解説していきます。公庫からの追加融資をご検討されている方に参考になると思いますので、ぜひご一読ください。

日本政策金融公庫から借入中に追加融資は受けられる?

結論からお話すると、日本政策金融公庫から創業融資等を借入中でも追加融資を受けることは可能です。

多くの個人事業主(自営業者・フリーランス)、ベンチャー・スタートアップ企業は、創業時の資金調達は、日本政策金融公庫か信用保証協会の保証付融資で行うと思います。

日本政策金融公庫の場合、創業融資を受けてすぐに追加融資は難しいのですが、いくつかの条件を満たしていれば審査を受けやすくなります

次の章で追加融資の審査に通過するための条件・ポイントをご紹介します。

日本政策金融公庫の追加融資を成功させるための6つのポイント

日本政策金融公庫の追加を融資を成功させるポイントを6点ご説明します。

ポイントは下記の6つです。

  1. 初回の借入額の内、2〜3割程度を返済している
  2. 延滞することなく、返済を期日通りに行なっている
  3. 法人税や所得税、住民税、消費税等の税金滞納をしていない
  4. 決算黒字でしっかりと利益が出ている
  5. 創業2年間は与信枠の範囲に注意
  6. 創業融資の完済から3年以内に申し込む

詳しくみていきましょう

①初回の借入額の内、2〜3割程度を返済している

まずは、初回融資額の内、2〜3割程度を既に返済しているということです。逆にいうと完済していなくて追加借入は可能ということです。

例えば、創業融資で1000万円借入していたとすれば、最低でも2,300万円は返済してからが良いでしょう。

返済実績を積んでおくことで、公庫からの信用力が増し追加融資が受けやすくなります

なお、返済は一括ではなく毎月引き落としなどの方がおすすめ。「コツコツ返済できる人」という信用に繋がります。

②延滞することなく、返済を期日通りに行なっている

毎月決まった期日までに返済をしておくことは最低条件です。

滞納や延滞中だと、追加融資はかなり難しくなるので現在の返済スケジュールはしっかりと守りましょう。

仮に業績が思ったようにいかず資金繰りが悪化し、どうしても返済に遅れてしまいそうという方は、公庫担当者にリスケジュールの相談をしてみてください。

また、過去に延滞実績がある方は、借入分を完済していれば追加借入の可能性があります。

③法人税や所得税、住民税、消費税等の税金滞納をしていない

所得税・法人税・住民税・消費税・個人事業税などの税金未払い・滞納は絶対NGです。

滞納分を完済していれば審査通過の見込みはありますが、それでも信用力の低下は免れません。

日本政策金融公庫は100%国が出資している金融機関なので、基本的に税金滞納中の借入はできないことを覚えておいてください。

④決算が黒字でしっかりと利益が出ている

追加融資のタイミングは、1期目または2期目の決算を迎えてからがおすすめです。

損益計算書や貸借対照表などの決算書類がなければ、日本政策金融公庫としても客観的な業績で判断をすることができません。

決算が出て、経営が順調で黒字が出ていれば、追加融資の可能性は高まります。

⑤創業2年間は与信枠の範囲に注意

実は日本政策金融公庫では、創業2年間の与信枠が決まっています。

与信枠は融資申請時のシチュエーションによって変わります。

個人で申請した場合・・・与信枠1000万円

認定支援期間(税理士や公認会計士etc)経由で申請した場合・・・与信枠2000万円

基本的に創業2年以内は、上記金額を超えた借入はできません。

上記以上の金額を借りたい場合は、他行からの借入を検討してみましょう。ベンチャー・中小企業であれば、日本政策金融公庫と併用できる「信用保証協会の保証付き融資」がおすすめです。

保証協会の保証をつけることで民間銀行から低金利で融資を受けられるので、気になる方は検討してみてください。詳細は以下で解説しています。

【関連記事】信用保証協会の保証付融資とは?金利や審査の流れを解説

⑥創業融資の完済から3年以内に申し込む

融資を受けたというデータは、日本政策金融公庫で3年間保有され、3年を過ぎるとデータが削除されます。

つまり、完済後3年以内であれば、公庫は企業データや返済実績を保有しています。

そのため、審査時は必要な書類も少なく、審査期間も大幅に短縮できます。

早ければ、最短1日で申請が通ることも。筆者の知り合いの会社では、午前中に公庫へ追加融資を申請し、午後には審査が降りたというケースもあります。

逆に3年を過ぎると完全新規での申請になり、借入申込書や事業計画書を0から作成する必要があります。

赤字決算でも日本政策金融公庫の追加融資は通る?

事業の将来性や期待値を評価された創業融資と違い、追加融資の際は「実績」が重視されます。それでは赤字が出てしまった会社は追加融資を受けられないのでしょうか?

結論、赤字だからいって追加融資の審査が通らないということはありません。

  • 赤字になってしまった原因
  • キャッシュフロー改善のための計画
  • 追加融資を受けた場合の返済スケジュール

などがしっかりと事実に基づき、説明ができていれば融資を受けられる可能性はあります。

また、現状は赤字だが直近の業績は上向きで数ヶ月後には黒字転換が見えている、などの場合も事業計画書を作り込むことで審査に通りやすくなります。

これらを全て自分で行うことは難しいと思いますので、税理士等の専門家に相談をあおぐといいでしょう。

審査落ち濃厚!?日本政策金融公庫の追加融資を受ける際のNG例

逆に追加融資の審査に落ちてしまうケースとはどのような時でしょうか?

ここではいくつかなパターンをご紹介します。

資金使途がつなぎ融資や赤字の補填

追加融資の申請時には、資金を何に使うか?という点を聞かれます。

ここで「赤字が出てるのでその補填として貸して欲しい」「次の借入ができるまでのつなぎ融資をしたい」といった理由では、審査落ちの確率大です。

仮にそこまで悪い業績ではなかったとしても、このようなマイナス理由での資金調達は上手くいかないケースがほとんどです。

具体的な事業計画、返済計画が策定できていない

赤字の状態で追加融資を受けるには、今後どういった経営改善をしていき、何故今資金調達が必要なのかといった計画を綿密に練る必要があります。

事業計画書や資金繰り表、経営改善書などの書類は融資担当者が納得できるように作りましょう。

もし自分で作成が難しければ、国が指定している認定支援機関のサポート受けるのがおすすめです。

  • 認定支援機関とは

中小企業や小規模事業者の経営相談、資金調達支援等を受けられる公的な支援機関。商工会議所や金融機関、税理士、弁護士、公認会計士などが認定されています。

資金調達関係の相談は、融資に強い税理士にするのがおすすめです。

認定支援機関は、中小企業庁の認定支援機関検索システムから調べることができます。

ただ、認定支援機関の中でも得意ジャンルは異なりますので、融資に強い認定支援機関をお探しの場合は、「日本政策金融公庫 認定支援機関 (エリア名)」などで検索してみると良いと思います。

追加融資で借入できる金額の目安はいくら?

追加融資で受けられるの金額ですが、運転資金の場合は大体月商の3ヶ月程度が目安になります。

実際には、決まりはなく、借入が必要な根拠や今後の事業計画次第で金額は増減します。

設備資金の場合には、見積書の提出が必要です。この際、相場金額と大きく乖離しないように注意しましょう。

日本政策金融公庫の場合、見積金額と実際の発注金額が異なっていても問題ありません。

公庫の追加融資が受けられない場合の資金調達手段

事業成長のため、資金繰り改善のために日本政策金融公庫に追加融資を頼んだが断られた。。

そうした方が利用できる資金調達方法や対応方法をご紹介します。

方法は下記の3点です。

  • 信用保証協会の保証付き融資に申請する
  • 赤字でも利用できる融資以外の資金調達方法を検討する
  • キャッシュフローが厳しければ、公庫にリスケジュール(条件変更)を申請する

詳細をみていきましょう。

①信用保証協会の制度融資に申請する

公庫の追加融資に断られたら、信用保証協会の保証付き融資に申請してみるのも1つの手です。保証が通れば、民間銀行から借入を実現できます。

実は信用保証協会を利用している中小事業者は、日本政策金融公庫を利用している中業企業よりも多く、その数はなんと126万事業者に登ります。

これまで検討していなかった方は詳細を調べてみてください。

融資以外の資金調達方法を検討する

赤字決算で資金繰りが悪化している会社、一時的に税金が支払えず滞納をしてしまっている会社は、金融機関以外からの資金調達方法を検討する必要があります。

赤字決算や税金滞納でも利用できる資金調達としては、

  • ビジネスローン
  • ファクタリング(売掛債権の買取)
  • 投資家からの出資

などが考えられます。

赤字中でもできる資金調達方法、税金滞納中でもできる資金調達方法は以下で詳しく解説しています。宜しければ、ご覧になってください。

【関連記事】税金滞納で融資審査が通らない時の資金調達方法まとめ

【関連記事】赤字や債務超過中でも資金調達できる6つの方法

キャッシュフローが厳しければ、公庫にリスケジュール(条件変更)を申請する

本当に目の前のキャッシュフローが悪ければ、一旦公庫の返済をリスケすることも視野にいれましょう。

借入中に追加融資が受けられなかったからといって、現在の返済を踏み倒すのは絶対に避けるべきです。

リスケをふくめ、目の前の資金繰りに悩んでいる方は以下が参考になります。

【関連記事】資金繰りが苦しい時の対処法と今すぐできる資金調達手段

日本政策金融公庫の追加融資、必要があれば専門家へ相談してみよう

今回は日本政策金融公庫の追加融資に関してご説明してきました。

  • 追加融資は1期目または2期目で決算が出たタイミングおすすめ
  • 公庫は完済から3年間データを保有するので、追加融資は3年以内に実施するべき
  • 赤字決算の場合は事業計画書・キャッシュフロー改善書・経営改善書などの書類が肝

です。

経営実績が直接審査に影響する追加融資では、創業時とは違った観点で融資担当者へ自社を評価してもらう必要があります。

追加融資で評価されるポイントや書類の書き方は、一人でやるよりも認定支援機関等に相談してみるのがおすすめです。

最近では、完全成功報酬で融資申請代行を行ってくれる先生も増えていますので、良ければ税理士ドットコムなどの相談サービスで探してみてはいかがでしょうか。