創業間もない会社や業歴の浅い会社が民間銀行のプロパー融資を受けるのは至難の技です。
そこで登場するのが信用保証協会。
信用保証協会の保証を受けることで取引実績がない中小・ベンチャー企業も民間銀行(信用金庫・地方銀行・都市銀行)から借入できるようになります。
「創業時期の資金調達には、日本政策金融公庫か信用保証協会の保証付き融資がおすすめ」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
今回は、信用保証協会の保証付き融資の仕組みや利用条件、申請の流れを解説します。
また、本記事では経営者のよくある疑問にもお答えしています。
- 日本政策金融公庫の融資との併用は可能?
- 返済できなくなった時の代償は?
- 保証付き融資のデメリットは?
融資・借入をご検討中の方はぜひご一読ください。
信用保証協会とは?仕組み、役割は?
信用保証協会は、昭和28年に信用保証協会法に基づき、中小企業・小規模事業者の円滑な資金調達をサポートするために設立された公的機関です。
全国51の拠点を持ち、各エリアに密着した保証業務を行なっています。
保証業務とは
創業間もない会社や中小・小規模事業者が近くの金融機関からお金を借りようと思っても、貸し倒れリスクが大きく、経営者の希望通りの資金調達は難しい場合がほとんどです。
そこで、信用保証協会が企業の債務保証をすることで、民間銀行からお金を借りれるようになります。
保証を受けて入れば、万が一企業が業績不振などで返済が困難になった場合も、信用保証協会が企業に代わって銀行へ借入残高を代位弁済(代わりに返済すること)してくれます。
金融機関も貸付金を回収することができるので、保証付き融資は固いビジネスなのです。
日本政策金融公庫よりも多い利用者
日本には、およそ358万の中小企業事業者がいます。これらは、日本全体の企業数の99.7%を占めています。
その内、公的金融機関を利用している事業者数内訳が以下になります。
【中小企業の公的機関利用者数】
- 信用保証協会・・・126万企業
- 日本政策金融公庫(国民生活事業)・・・88万企業
- 日本政策金融公庫(中小企業事業)・・・4.4万企業
- 商工組合中央金庫・・・7.5万企業
信用保証協会の利用企業は、公的機関の中でもダントツの126万企業!
多くの小規模事業者が利用していることがわかります。
信用保証協会の保証付融資のメリット
信用保証協会の保証付き融資のメリットは以下の3点です。
- 民間銀行からの借入が実現できる
- 日本政策金融公庫の融資と併用できる
- 自治体との連携で金利がお得になる
それぞれ詳しく解説します。
メリット①:民間銀行からの借入が実現できる
保証付き融資の最大のメリットは、プロパー融資を受けづらい中小企業でも民間銀行から借入が可能になる点です。
一般的に保証協会の保証は、「責任共有制度」と呼ばれ、銀行と保証協会、双方でリスクを負う形をとっています。
具体的には、保証協会が負担する代位弁済は全体の80%、残り20%は銀行が負担するという内容です。(厳密には、他の方式もありますがここでは割愛します。)
しかし、下記のいずれかに該当する場合は、保証協会の保証が100%となり、責任共有制度の対象外になります。
- 経営安定関連保証(セーフティネット保証)1号~4号、6号
- 危機関連保証
- 災害関係保証
- 創業関連保証(再挑戦支援保証を含む)、創業等関連保証
- 特別小口保険に係る保証
- 事業再生保証
- 小口零細企業保証
- 求償権消滅保証
- 中堅企業特別保証
- 東日本大震災復興緊急保証
- 経営力強化保証制度
- 事業再生計画実施関連保証制度
(引用:一般社団法人全国保証協会連合公式HP)
専門用語が並んでいますが、注目するべきは創業融資は保証100%になる点です。
保証100%ということは、銀行からすると貸し倒れリスクがないので融資を断る理由がなくなります。
創業融資として、信用保証協会の保証付き融資は非常に有効と考えられますね。
メリット②:日本政策金融公庫の融資と併用できる
第2のメリットは、日本政策金融公庫の融資と併用できる点です。
1行では、調達希望額に満たない場合、公庫と民間金融機関(信用金庫etc)の両方から借入を行うことで増額が可能です。
日本政策金融公庫では、支店決裁枠が決まっていたり、創業後2年間の与信枠が設定されています。
その上限を超えて融資を借りたいという場合、保証付き融資の活用もおすすめです。
【関連記事】日本政策金融公庫の新創業融資制度を通すコツや条件を解説
メリット③:自治体と連携した制度融資で金利がお得に
制度融資とは、金融機関・保証協会・自治体が連携して実施する融資制度です。
制度融資を活用することで、自治体からの利子補給を受けられます。(自治体によって補給率は異なります)
中には、金利1%台で借りられるケースもあります。
信用保証協会の保証付融資のデメリット
信用保証協会の保証付き融資のデメリットは以下の3点です。
- 利用できる会社が限られている
- 前払いの保証料を支払う必要がある
- 債務不履行時は連帯保証人の代表に返済義務がある
詳しく解説します。
デメリット①:利用できる会社が限られている
保証付き融資を利用できるのは、中小・小規模事業者のみです。
業種ごとに、一定の資本金・従業員規模の会社しか適用されません。
中には利用ができない会社もあります。
適用条件は次の章で詳細をまとめています。
デメリット②:保証料を支払う必要がある
制度融資を活用すれば、金利1%台も可能としましたが、保証付き融資では金利の他に保証協会へ支払う保証料が発生します。
例えば、東京信用保証協会では、保証率は、年率0.45%〜1.9%の間で設定されます。
区分は保証内容や融資合計額・担保の有無によって決まります。
詳細を知りたい方は、信用保証協会の保証料率体系をご覧ください。
つまり、民間金融機関からの借入利率に加えて、上記の保証料率を加えたものが実質的な金利負担です。
デメリット③:債務不履行時は連帯保証人の代表に返済義務がある
保証付き融資は無担保、連帯保証人無しで借入ができる一方、日本政策金融公庫の創業融資(新創業融資・中小企業経営力強化資金)と違い、代表者保証がつきます。
そのため、返済ができず滞納が続いた場合、最終的には代表者個人に債務返済の義務が残ります。
債権回収は、信用保証協会が行います。
なお、代表者保証がつかない創業融資としては、日本政策金融公庫の「中小企業経営力強化資金」がおすすめです。
【関連記事】無担保・無保証の公庫融資「中小企業経営力強化資金」とは?
信用保証協会の保証付融資の利用条件
中小零細企業にとって魅力的に映る保証付き融資ですが、利用にあたってはいくつかの条件があります。
企業規模(資本金・人数)
業種ごとに資本金と従業員数の条件が設定されています。利用にあたり、どちらかの条件に合致している必要があります。
業種 | 資本金 | 従業員数(小規模企業者) | |
製造業等(建設業、運送業、不動産業を含む) | 3億円以下 | 300人以下(20人以下) | |
ゴム製品製造業 | 3億円以下 | 900人以下(20人以下) | |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下(5人以下) | |
小売業・飲食業5 | 5千万円以下 | 50人以下(5人以下) | |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下(5人以下) | |
ソフトウェア業
情報処理サービス業 |
3億円以下 | 300人以下(20人以下) | |
旅館業 | 5千万円以下 | 100人以下(20人以下) | |
医業を主たる事業とする法人 | – | 300人以下(20人以下) |
業種
基本的にはほとんどの業種が対象になりますが、一部、農林業や金融業、風俗関連業、宗教法人などは保証の対象外です。
その他、許認可や届出が必要な事業は、当該の許認可を受けていることが保証条件になります。
エリア
各信用保証協会の管轄エリアで事業を行なっている必要があります。
管轄外の信用保証協会からは保証が受けられませんので注意しましょう。
保証協会の融資申請の流れと必要書類
保証協会に融資申請する際の流れをご紹介します。
申請は、以下の4ステップで進みます。
- 保証の申し込み
- 保証審査
- 保証承諾
- 融資実行
各ステップの詳細をご紹介します。
STEP1.保証の申し込み
信用保証の申し込み窓口は、「金融機関」か「信用保証協会」の大きく2つです。
金融機関の場合は、金融機関の窓口へ行き、金融機関経由で保証協会へ申し込みを行います。
信用保証協会の場合は、各管轄の保証協会へ行き相談の後、申込書を受け取ります。
いずれの場合も申し込みのあたり、以下の必要書類が必要です。
【必要書類】
- 信用保証委託申込書
- 申込人(企業)概要
- 信用保証依頼書
- 信用保証委託契約書
- 個人情報の取り扱いに関する同意書
- 決算書または確定申告書
- 商業登記簿謄本
- 印鑑証明書
STEP2.保証審査
保証審査が実施されます。審査過程で現地訪問・面談を行うケースがあります。
審査期間は概ね3週間〜1ヶ月程度です。
STEP3.保証承諾
審査に通ると「信用保証書」が発行されます。
金融機関はこの保証書に記載された条件基づき融資を実行します。
STEP4.融資実行・返済開始
融資が実行されたら、返済スケジュールに合わせて借入金を返済していきます。
信用保証協会の保証付融資まとめ
今回は、信用保証協会の保証付き融資の仕組みやメリット・デメリット、条件・申請の流れ等をご説明しました。
信用保証協会は、信用力を提示できない中小企業にとってありがたい存在です。
ぜひ制度を上手に活用して資金調達を行なって頂けますと幸いです。