日本政策金融公庫の面談でよくある質問と回答のコツ

日本政策金融公庫 面談 質問

創業間もない方や設立直後のベンチャー企業経営者にとって、資金調達の選択肢として代表的なのが日本政策金融公庫の融資制度です。

本記事では、融資額や審査結果を左右する重要な「面談」のコツについて、公庫から融資を受けた筆者が解説します。

面談次第で融資額が数十万〜数百万円変わることもあるため、万全の準備で臨みたいですよね。

この記事では、面談成功のポイントや失敗を防ぐ注意点、よくある質問への対策、PRのコツを具体的にご紹介します。これらを押さえることで、公庫担当者へのアピール力を高め、審査通過の可能性を大きく引き上げられます。

ぜひ、面談前の準備にお役立てください。

日本政策金融公庫の面談内容

初めて公庫の融資面談を受ける方は、服装や面接時間、持参すべき書類など、不安な点が多いかもしれません。

一般的な礼儀作法を守っていれば、マナーには問題ありませんが、必要書類は種類が多いため、抜け漏れがないよう事前に確認しておくことが大切です。

面接時の服装

面談時は必ずしもスーツでなくても構いませんが、清潔感が重要です。オフィスカジュアルな服装でも問題ありません。

ただし、ジーパン、サンダル、半ズボン、よれたシャツ、汚れた靴、スニーカーなど、面接にふさわしくない服装は、悪い印象を与える可能性があるので避けましょう。

お金の貸し借りをする場であるため、信頼感を与えることが大切です。服装はその一環として印象に影響しますので、気をつけてください。

面接時間

面談の所要時間は、おおよそ1時間から1時間30分程度です。

認定支援機関や顧問税理士などの専門家が同席する場合、事前にやりとりが済んでいるため、面談が30分程度で終わることもあります。

当日持参するべき必要書類【添付資料可】

借入申込書や創業計画書(事業計画書)などの書類を提出した後、日本政策金融公庫から面談当日の持ち物が通知されます。

主な持ち物は以下の通りです。

  • 創業計画書・事業計画書
  • 免許証やパスポートなどの本人確認書類
  • 源泉徴収票
  • 銀行口座の通帳
  • 公共料金の支払い履歴
  • 不動産貸借契約書
  • 営業許可証
  • 資格証明(調理師免許、宅建、キャリアコンサルタント資格など)
  • 住宅ローンなどの支払い明細書
  • 開業予定地の地図
  • 設備資金の場合、購入物の見積書
  • 印鑑、印鑑登録証

また、日本政策金融公庫から指定された書類以外にも、自分の事業をアピールするための書類を持参することも可能です。

以下のような書類を準備すると有効です。

  • 申請者(代表)の職務経歴やプロフィール
  • 顧客ターゲット分析表
  • 競合分析表
  • 損益計画書
  • 看板やメニューの詳細
  • 店舗前の交通量調査データ

など

日本政策金融公庫の面談でよくある6つの質問

こちらでは、融資面談でよく聞かれる質問をご紹介します。

  1. 創業・起業の動機
  2. 売上と経費の根拠
  3. 自己資金の金額と集め方
  4. 事業内容
  5. 事業の強み・他社との差別化要因
  6. 事業リスクと対処法

それぞれ詳しく解説していきます。

質問①:創業・起業の動機

創業計画書にも必須の項目となっている創業動機は、面談でも必ず聞かれることが多い質問です。

担当者は、あなたがどれほどの想いを持って事業を始めるのかという心情面と、事業が成功する可能性がどれくらいあるのかという論理的な面を知りたいと考えています。

自分の言葉で熱意を伝えることは大切ですが、「なぜこのビジネスがうまくいくのか」という点を論理的に説明できるように準備しておくことが重要です。

質問②:売上と経費の根拠

政府100%出資の銀行である日本政策金融公庫も、融資を行う際には返済の目処が立つことを重視します。

無計画にお金を貸すことはありません。そのため、売上や経費の見込みに対する明確な根拠を示すことが求められます。

例えば、ある企業では、代表者が同業界で長年働いてきた経験を基に、前職での顧客単価や1社あたりの継続率といった実績に基づき、売上見込みを説明しました。

公庫担当者は、全ての業界に精通しているわけではありませんが、多くの融資経験から業界の平均単価などについては感覚的に把握している場合が多いです。

もし担当者があなたの業界に詳しくない場合でも、納得できる説明を心がけましょう。

質問③:自己資金の金額と集め方

自己資金については、公庫担当者が非常に慎重にチェックします。

一時的に知人やノンバンクからお金を借りて積み増す「見せ金」は、ほとんどの場合、バレてしまうため、面談時に嘘をつくことは絶対に避けましょう。

通常、半年分の入出金履歴を確認されることが多く、場合によっては1年分の履歴を求められることもあります。

最も信頼されるのは、時間をかけてコツコツと積み立てた自己資金です。

また、結婚している場合は、配偶者の通帳を提示することも有効です。家計を共有している人の貯金は、信頼できる資産として評価されることが多いです。

質問④:事業内容

事業内容を説明する際は、日本政策金融公庫の面談担当者にしっかりと理解してもらうことが重要です。

担当者は、上層部に対してあなたのビジネスモデルを説明し、稟議を通す役割を担っています。

そのため、なるべくわかりやすく、イメージしやすい言葉で説明しましょう。

例えば、新しいサービスやAI・人工知能など最先端の技術を活用したビジネスの場合、事業計画書だけでなく、パワーポイントなどで説明資料を準備しておくと効果的です。

質問⑤:事業の強み・他社との差別化要因

「なぜこの事業は成功するのか?」という点を納得してもらう必要があります。

自社の独自の強みや、競合他社との違いを明確に伝え、担当者にしっかりと理解してもらいましょう。

質問⑥:事業リスクと対処法

事業が必ず成功するわけではありません。

むしろ、市場環境の変化などに対してどのように対応するかが重要です。

事業リスクを完全に予測することは難しいですが、「リスクは考えていません」などという回答はNGです。

どんな事業にも予期しない問題は起こり得ます。例えば、「新たな仕入れ先として〇〇を検討しています」といった具体的なリスク対策や施策を示しましょう。

日本政策金融公庫の面談を成功させるポイント

面談当日までに以下の5項目を確認し、しっかり準備を整えてください。

  1. 提出書類と発言に整合性を持たせる
  2. 専門用語・業界用語は分かりやすい言葉に置き換える
  3. 「いくら借りられますか?」はNG
  4. 突っ込んだ質問をされても感情的にならない
  5. 自分なりのストーリーや想いを伝える

それでは、詳細を見ていきましょう。

①:提出書類と発言に整合性を持たせる

面談は、事前に提出した事業計画書や創業計画書を基に進行します。

そのため、計画書の内容と発言に一貫性がないと、事業計画が実現可能か疑問を持たれてしまいます。

もし税理士などに書類作成を手伝ってもらった場合でも、必ず自分の言葉で説明できるよう、事前にプレゼンの練習をしておくと安心です。

②:専門用語は分かりやすい言葉に置き換える

担当者は融資のプロですが、すべての業界や職業に精通しているわけではありません。

そのため、業界特有の用語や慣習を使う場合は、誰でも理解できるように説明することが大切です。

普段使っている言葉が難しいと感じた場合、家族や友人に説明してみて、第三者が理解できる表現に直す練習をしておくと良いでしょう。

③:「いくら借りれますか?」はNG

公庫に限らず、融資や借入の面談で「いくら借りられるでしょうか?」という質問は避けるべきです。

その理由は、資金調達はあくまで事業を成功させるために不足している資金を調達することが目的であり、手元に現金を積み上げることが目的ではないからです。

調達する資金が何に使われるのか、資金の使途が明確だからこそ、融資を希望する金額が通るのです。

「いくら借りられるでしょうか?」という質問は、事業計画を無視してお金が欲しいだけの印象を与える可能性があり、逆に信頼を失うことになります。

そのため、この質問は控えるようにしましょう。

④:突っ込んだ質問をされても感情的にならない

担当者の中には、優しい口調で質問してくる人もいれば、厳しく突っ込んだ質問をしてくる人もいます。

しかし、どんなに厳しい質問をされても感情的になって担当者と衝突してはいけません。

前述したように、担当者はあなたの味方です。

ただし、担当者も社内でプレゼンを行い、上司から突っ込まれた質問に答える義務があります。

そのため、冷静に対応し、突っ込まれた質問にはしっかりと準備して答えられるようにしておくことが大切です。

通常、担当者をこちらで選ぶことはできませんが、公庫との繋がりが深い、融資実績豊富な認定支援機関や専門家経由であれば、ある程度親しい担当者を指定できる場合もあります

不安な方は、こうした専門家のサポートを受けることも検討してみると良いでしょう。

⑤:自分なりのストーリーや想いを伝える

面談は、書類では伝えきれない感情的な部分を伝える絶好の機会です。

申請書類は論理的に構成されている一方、面談ではその背後にある情熱や想いをしっかりと伝えることを意識しましょう。

公庫担当者も人間ですので、「この人のために応援しよう」と感じることは少なからずあります。

他の申請者と差別化できる、自分なりのストーリーや想いをぜひ伝えてください。

日本政策金融公庫の面談に関するQ&Aまとめ

日本政策金融公庫の面談で経営者の方からよくある質問をまとめました。

Q.面談から審査結果が出るまでどれくらいの期間がかかりますか?

初めての融資面談の場合、審査結果が出るまでにおおよそ1週間〜2週間程度かかります。

過去に融資を受けた実績がある場合、公庫の履歴に情報が残っているため、初回よりもスムーズに審査が進むことが多いです。

ただし、公庫が保有する登録情報の有効期限は3年です。

3年を過ぎると、新たに申請を行う必要があるため、注意が必要です。

Q.面談の手応えがありません。今から何かできることはありますか?

面談後にできることは限られていますが、まれに公庫担当者から「ここを修正できますか?」や「融資希望額を減額できますか?」などの修正依頼があることがあります。

自分からできることとしては、追加資料の送付が考えられます。

例えば、自己資金が不足している場合、開業準備にかかった費用を自己資金に組み込む、または親から贈与を受けることで自己資金を増やす方法があります。

その他、アピールできる資料があれば、審査結果が決定する前に担当者に提出することをお勧めします。

Q.融資を断られた場合、理由は教えてもらえますか?

基本的には、融資が断られた理由は教えてもらえません。

ただし、審査過程の中で、理由をほのめかすことがある場合もあります。

融資を再申請するには、最低でも半年以上の期間を置く必要があるため、審査落ちの理由を改善した上で再度申請することが重要です。

審査落ちの理由について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

【関連記事】日本政策金融公庫に審査落ちする9つの原因とは?

Q.審査時に通帳を見せると思いますが、その後も定期的にチェックされますか?

通帳のチェックは審査時のみ行われます。

融資実行後は、通帳の確認はありません。

Q.口座がネット銀行のため、通帳がありません。

ネット銀行の場合、パソコン画面を印刷するか、PDFで入出金履歴をダウンロードして紙で提出すれば問題ありません。

エクセル形式では数字の改ざんが可能なため、PDFでの提出をおすすめします。

日本政策金融公庫の担当者はあなたの味方!

日本政策金融公庫の面談担当者は、基本的に申込者にお金を貸したいと考えています。

なぜなら、政府100%出資の日本政策金融公庫は、政策に従って事業運営を行っています。現在の政策では、ベンチャー企業の拡大を掲げており、国として開業率の上昇を目指しています。

そのため、公庫でも創業融資を積極的に行う方針です。

実際、公庫が発表している融資実績データによると、平成28年度の創業融資実績(創業前および創業1年以内)は28,392件となり、過去最高を記録しました。

最近では、公庫の国民生活事業の決算が赤字となり、融資の引き締めが行われるのではないかという噂もあります。

しかし、知り合いの融資に強い税理士に確認したところ、決算状況が審査に与える影響はほとんどないようです(ただし、不動産投資のための借入は難しくなっているようです)。

つまり、公庫担当者は経営者の敵ではなく、味方であると言えます。

ただし、面談担当者には決裁権がなく、面談後に社内で上長の稟議を通さなければなりません。そのため、担当者は上司を説得するための材料を探しています。

面接官はあくまで自分の味方であり、上長を納得させるための武器を探してくれているという認識を持てば、自然な気持ちで面接に臨むことができるでしょう。

日本政策金融公庫の面談対策まとめ

日本政策金融公庫は、ベンチャー企業や中小企業の経営を支える非常に魅力的な存在です。

これから面談を迎える方は、ぜひ本記事で紹介したポイントや注意点をしっかりと押さえて、後悔のないように準備を整えましょう。

また、税理士や会計士の中には面談練習を提供しているところもあります。不安があれば、こうしたサポートを受けてみるのも良いでしょう。