回し手形(裏書手形)とは?仕組み・注意点・ファクタリングとの違いをわかりやすく解説

回し手形 裏書手形 とは わかりやすく

「支払いに現金を使わず、手形でやり繰りする方法があるのをご存じですか?」
それが「回し手形(裏書手形)」と呼ばれる決済手段です。

資金繰りを一時的に安定させる効果が期待できる一方で、信用リスクや支払い義務などの注意点もあります。
また、現金をすぐに確保したい場合には、「ファクタリング(売掛債権の買取)」という方法も選択肢となります。

本記事では、以下のポイントをわかりやすく解説します。

  • 回し手形の仕組みとメリット・リスク
  • ファクタリングとの違い
  • どちらを選ぶべきかの判断基準

中小企業や個人事業主の経営者の方にとって、資金繰り改善のヒントとなる内容です。ぜひ最後までご覧ください。

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回し手形(裏書手形)とは?手形割引との違いも解説

「回し手形」と「手形割引」は、どちらも中小企業の資金繰りや取引決済に関わる手形の活用方法ですが、使い方や目的には大きな違いがあります。
このパートでは、それぞれの仕組みと違いを、実務でどう使えるのかという視点も交えてわかりやすく解説します。

回し手形は、手形を他社への支払いに使う方法(裏書手形)

回し手形(裏書手形)とは、取引先から受け取った手形を、自社の別の支払い先への支払いに使う方法です。
このような使い方は「裏書による譲渡」と呼ばれます。

例:
・C社がA社から100万円の約束手形を受け取る
・C社がB社への支払いに、この手形をそのまま使う(裏書して渡す)
→ C社はB社への支払いを「現金でなく手形で済ませる」ことができる

このとき、C社は裏書人として責任を持つ立場になるため、A社が不渡りを起こすとC社が支払う義務を負う可能性があります。

手形割引は、受け取った手形を期日前に現金化する方法

一方、手形割引は、受け取った約束手形を金融機関に持ち込み、期日前に現金化してもらう方法です。
資金繰りが厳しい時など、すぐに現金が必要な場合の有効な手段として活用されます。

例:
・C社がA社から受け取った手形の支払期日が1か月後
・今日すぐに現金が必要なので、手形を銀行で割引してもらう
・銀行は期日までの日数分の利息を差し引いた金額をC社に支払う

この方法では、実際に現金が手元に入るため、緊急の資金ニーズに対応可能です。

実際のビジネスでどう使い分ける?

区分 回し手形 手形割引
主な目的 仕入先などへの支払いを手形で済ませる 手形を現金化して資金を得る
相手先 取引先企業(支払先) 銀行・信用金庫など金融機関
現金化の可否 ×(現金は得られない) ○(すぐに現金を得られる)
リスク 不渡り時に連帯責任を負う可能性あり 割引料(手数料)が発生
向いているケース 現金がなくても支払義務を果たしたいとき 現金が今すぐ必要なとき

回し手形の注意点とリスク|知らないと危険な3つのポイント

回し手形は現金を使わずに取引決済ができる便利な手段ですが、いくつかのリスクと注意点があります。
誤って使うと、資金繰りを改善するどころか信用問題や支払いトラブルにつながる可能性もあるため、しっかり理解しておくことが大切です。

ここでは、特に注意すべき3つのリスクをわかりやすく解説します。

① 取引先の了承が必要|一方的な利用はできない

回し手形を利用する際は、支払い先(受取側)の事前了承が必要不可欠です。
突然「今回は手形で払います」と伝えても、受け取ってもらえないケースがあります。

また、「手形=資金難の会社が使うもの」というネガティブな印象を持たれる場合もあり、信用に影響するおそれも。
そのため、事前に丁寧な説明を行い、了承を得ておくことが信頼関係を保つカギとなります。

② 振出人の信用と支払期日に左右される|受取拒否のリスクも

回し手形で渡す手形は、他社(振出人)が支払うものです。
そのため、手形を受け取る側は「この会社、本当に期日に払ってくれるのか?」という不安を抱くことがあります。

もし振出人の信用力が低かったり、支払期日が遠すぎたりすると、「この手形では受け取れません」と断られることも
特に、期日が遅い手形は相手先の資金繰りに悪影響を与える可能性があるため注意が必要です。

③ 不渡り時に自社が支払い責任を負う可能性がある

最も注意すべきは、手形が不渡りになった場合のリスクです。
仮に振出人(もともとの手形発行者)が期日までに支払いを行わなかった場合、裏書人である自社に支払い義務が及ぶ可能性があります

これは「償還請求権」と呼ばれる制度で、裏書人には連帯的に支払いを請求される可能性があることを意味します。

つまり、取引先に渡した手形が不渡りになると、結局は自社がその金額を肩代わりすることになるかもしれないというリスクがあるのです。

回し手形が使えないときの代替手段とは?

回し手形は便利な決済手段ではありますが、利用には相手企業の了承や、振出先の信用力など複数の条件が求められます。
そのため、状況によっては使えない、または使わないほうがよい場面も存在します。

代替手段①:ファクタリングで売掛金を即現金化する

すぐに現金が必要な場合や、相手企業に手形の利用を断られた場合は、「ファクタリング」が有効な選択肢です。

ファクタリングとは、自社の売掛債権(まだ入金されていない請求書)を専門業者に買い取ってもらい、早期に現金化する資金調達方法です。

  • 取引先の了承は不要(2社間ファクタリングの場合)
  • 手形のような不渡りリスクがない
  • 信用力が低くても利用可能なケースが多い

といった特徴があり、回し手形の代替手段として注目されています。

代替手段②:ビジネスローンや融資枠の活用

一時的な資金ニーズに対応するため、ノンバンクのビジネスローンや金融機関の融資枠を確保しておくことも検討に値します。

ただし、融資の場合は審査に時間がかかることが多く、信用情報や財務状況が影響する点には注意が必要です。
即効性や柔軟性を重視するなら、ファクタリングの方がスピード感に優れる場合があります。

【関連記事】ビジネスローンの審査基準と審査を通すための5つのポイント

代替手段③:支払サイトの交渉や分割払いの提案

手元資金に余裕がない場合、取引先との支払条件を見直す交渉を行うことも1つの選択肢です。

  • 支払サイト(支払い期日)の延長
  • 一部支払い+残額分割といった柔軟な支払い方法の提案

などを通じて、資金繰りの余裕を生むことが可能です。
ただし、これは相手先との信頼関係や交渉力に大きく左右されます。

ファクタリングとは?回し手形のリスクを回避する方法

「売掛債権を使って、すぐに資金調達できる方法をご存じですか?」
それが、近年注目を集めている「ファクタリング」という資金調達手段です。

ファクタリングは“売掛金を現金化する”資金調達の方法

ファクタリングとは、取引先からの未入金(売掛金)を、ファクタリング会社に買い取ってもらうことで、早期に現金化できる仕組みです。
売掛先の入金を待たずに資金を得られるため、資金繰りに悩む中小企業にとって強力な手段といえます。

例:
・A社に対して100万円の売掛金がある(入金予定は翌月末)
・この売掛金をファクタリング会社に売却し、即日80~90万円を現金で受け取る
→ 入金を待たずにキャッシュフローを改善できる

ファクタリングは“償還請求なし”だから安心して使える

回し手形とは異なり、ファクタリングには「償還請求権(しょうかんせいきゅうけん)」が原則として存在しません。
これはつまり、売掛先が倒産しても、基本的に自社が返済を求められることはないということです。

※ただし、契約形態によっては例外もあるため、詳細は契約書を確認しましょう。

このように、回し手形のように「不渡り=自社が払う」構造とは異なり、リスクを限定できるのがファクタリングの大きな強みです。

ファクタリングは「信用力に左右されにくい」資金調達手段

さらにファクタリングでは、売掛先の信用力を重視するため、自社の業績や信用情報が弱くても資金調達できる可能性があります。
このため、創業間もない企業や一時的に赤字の会社でも利用しやすいのが特徴です。

【関連記事】手形割引とファクタリングの違いとは?

回し手形とファクタリングを比較|どちらを選ぶべき?

資金調達の手段として「回し手形」と「ファクタリング」のどちらを選ぶべきかは、状況によって異なります。
ここでは、両者の違いを比較したうえで、それぞれに適したケースをご紹介します。

比較表|回し手形とファクタリングの違い

比較項目 回し手形 ファクタリング
手段の種類 手形を使った決済 売掛債権の売却による資金調達
調達スピード すぐには現金化できない 即日〜数日で現金化可能
信用リスク 不渡り時に支払い義務が発生する 原則として返済義務なし(ノンリコース)
手続き 取引先の了承が必要 原則として取引先への通知不要(※)
対応可能額 手形の金額による 売掛金の範囲内で柔軟に対応
向いているケース 現金不要だが支払いを済ませたいとき 今すぐ資金が必要なとき

※2社間ファクタリングの場合。契約内容によっては通知が必要なケースもあります。

「回し手形」が向いているのはこんなとき

  • 取引先と良好な関係があり、了承を得やすい
  • 現金は不要だが、仕入先などへの支払い手段を確保したい
  • 手形の振出人に十分な信用力がある

「ファクタリング」が向いているのはこんなとき

  • すぐに現金が必要
  • 信用力が弱く、銀行融資が難しい
  • 取引先に知られずに資金調達したい

「不渡りリスクを避けたい」「スピーディに現金を確保したい」といった目的があるなら、ファクタリングが安心して使える選択肢となります。

一方、取引先との関係性や支払いの方法として現金以外の選択肢を使いたい場合には、回し手形も有効な手段となるでしょう。

どちらにもメリット・デメリットがあるため、自社の状況に合わせて選ぶことが重要です。

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回し手形まとめ|リスクと特徴を理解して正しく活用を

回し手形(裏書手形)は、現金を使わずに支払いができる便利な手段ですが、同時にリスクも伴います。
最後に、この記事の要点を簡潔にまとめておきましょう。


回し手形のメリット

  • 現金を使わずに仕入れ・支払いができる
  • 資金繰りの悪化を一時的に回避できる
  • 信頼関係のある取引先同士で活用されやすい

回し手形のデメリット・リスク

  • 振出人が不渡りになると、自社が支払い責任を負う
  • 取引先の了承が必要で、信用力によっては断られることもある
  • 支払い期日が長いと、相手先のキャッシュフローに影響する

こんなときはファクタリングも検討を

  • すぐに現金が必要なとき
  • 手形が断られてしまったとき
  • 不渡りなどの信用リスクを回避したいとき

ファクタリングは、売掛債権を現金化できる柔軟な資金調達手段で、回し手形が使えない場面でも有効に機能します。


判断に迷ったときは?

「資金繰りをどう改善すべきか?」は企業ごとに異なります。
今回の記事が、貴社の現状に合った資金調達手段を見極める一助となれば幸いです。

他にもファクタリングや資金繰りに関する記事をご紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。

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