日本政策金融公庫の借入を返済できなくなった時の対処法をご紹介します。
日本政策金融公庫は、民間銀行のプロパー融資が難しい小規模事業者の強い味方です。
しかし、中には「キャッシュフローがうまく回らず公庫から借りたお金を返せない」「資金繰りが悪化した返済原資がない」といった状況になることもあると思います。
今回は、公庫(国金)への返済を滞納してしまった時の対処法やその後の流れをご説明していきます。
予定通り返済できないからといって担当者に連絡せず、通知を無視するのは大変危険です。場合によっては、財産差し押さえの事態になることも。
本記事では様々な対応方法をご紹介していますので、最悪の事態になる前に今できることを実践して頂けますと幸いです。
【関連記事】コロナで融資返済できない時に使える「特例リスケジュール」とは?
日本政策金融公庫の借入返済を滞納するとどうなる?
日本政策金融公庫から融資を受けた場合、基本的には毎月返済をしていくはずです。
返済が遅れた場合、公庫がどのような対処をしていくのか順を追ってみていきましょう。
下記5ステップでご説明します。
- 公庫担当者から電話での督促
- 郵送で督促状の送付
- 一括払い請求書の送付
- サービサーへの債権譲渡または代位弁済の通知
- 訴訟によって法的回収(財産差し押さえ)
ステップ①:公庫担当者から電話での督促
返済期限に遅れると、まずは日本政策金融公庫の担当者から電話督促が実施されます。
大体返済期限から2、3日すると電話がかかってきますので、入金が遅れそうな場合には「いつまでに振込か」期日を伝えましょう。
基本的に公庫からの電話は厳しく取り立てを行うようなものではありませんが、電話に出なかったり、約束期日になっても支払いがない場合は次のステップに進みます。
ステップ②:郵送で督促状の送付
電話連絡後に支払いがされなかった場合、郵送で督促状が送付されます。
督促状には、滞納金額や支払い期日が記載されています。
ステップ③:一括払い請求書の送付
郵送督促状も無視し続けると、滞納から数ヶ月経過した段階で「一括払い請求書」が送付されてきます。
請求書には、公庫からの借入金残高と遅延損害金の合計金額と一括で支払う旨が記載されています。
ステップ④:サービサーへの債権譲渡または代位弁済の通知
それすら無視すると日本政策金融公庫からサービサーと呼ばれる債権回収会社に債権が譲渡されます。
債権譲渡通知には、貴社の資産を差し押さえるという旨の記載があります。
ステップ⑤:訴訟によって法的回収(財産差し押さえ)
政府系の日本政策金融公庫と違い、サービサーは債権回収によって利益を得る民間業者です。そのため、取り立ては一段階厳しくなります。
最終的には、裁判所から呼び出し状が届きます。裁判になれば、ほぼ100%の確率で債務者の敗訴が決定します。
敗訴が決定すると、強制執行により法人財産が差し押さえられます。
日本政策金融公庫に返済できない時の3つの対処法
滞納をそのままにしていると事態が悪化していくことがわかりました。それでは、返済が遅れそうな場合に取るべきアクションは何でしょうか。
大きく以下の3つの対処法があります。
- 公庫担当者へ返済猶予の相談
- 経営改善が必要な場合はリスケジュールの申し込み
- ファクタリング等による資金調達
対処法①:公庫担当者へ返済猶予の相談
まずは、日本政策金融公庫の担当者に返済を猶予してもらえないか相談するのが先決です。
返済期日を伸ばせばいいのか、返済計画自体を見直す必要があるのか、状況に応じて担当者も相談に乗ってくれます。
公庫側も返済がきつくて倒産になるより、返済を猶予して事業を立て直して改善される方がいいので、まずは担当者に連絡をとり状況を説明するのをおすすめします。
対処法②:抜本的な経営改善が必要な場合はリスケの申し込み
長期的に返済計画の見直しが必要な場合は、公庫へリスケジュール(条件変更)の依頼を行います。
リスケジュールとは、経営改善のために毎月の返済を一定期間利息のみにしてもらう、毎月の返済額を減額してもらう、といった処置です。
目の前の資金繰り改善に集中して取り組めるメリットがある一方、新たな借入が難しいなどデメリットもあります。詳細は以下の記事でご覧ください。
【関連記事】リスケジュールのメリット・デメリット!成功率はどれ位?
対処法③:返済原資を集めるため資金調達する
「来月の入金日までの運転資金があればなんとかなる」ような場合、一時的に返済原資を集めるための資金調達を行うことも視野にいれましょう。
返済期日までにスピーディーに資金調達を実施するためには、ビジネスローンやファクタリングなどの申請から入金までのスパンが短い方法を選択すると良いでしょう。
【関連記事】ファクタリングとは?仕組みと活用方法をわかりやすく解説
なお、赤字中の会社でも利用できる資金調達方法を以下でまとめていますので、該当する方はご覧になってみてください。
【関連記事】赤字や債務超過中でも資金調達できる6つの方法
日本政策金融公庫のリスケ対応事情
日本政策金融公庫では、政府系の金融機関として既存借入の返済条件緩和に柔軟に対応しています。
少し前の情報になりますが、平成20年度には条件変更8万件の実績がありました。
リスケジュールというと少し気がねしてしまったり、断られることが多いのでは?と感じている経営者の方が多いようですが、実際は多くのリスケジュール依頼に対応してくれているのが実情です。
最終的に会社が潰れた場合、代表者も破産手続きをしなければいけない?
公庫からの借入を残したまま、会社が潰れた場合代表者も破産手続きを取らなければいけないのでしょうか。
結論、無担保・無保証の融資制度であれば、代表者は責任を追う必要がありません。
日本政策金融公庫の融資では、「中小企業経営力強化資金」「新創業融資」の2つの創業融資が有名な無担保・無保証制度です。
基本的に株式会社は、経営者と別人格とみなされるので、株式会社が残した融資残高や買掛金を代表者個人が返済しなければいけない義務はないのです。
ただし、代表者保証付きの融資制度や個人事業主・フリーランスが借入する場合は、会社が破綻した場合でも経営者本人が債務を背負います。
緊急の場合は、つなぎ資金を調達して乗り切るのも一つの手
日本政策金融公庫に返済ができない時の対処法をご説明してきました。
一時的な返済資金不足であれば、ビジネスローン等を利用し、長期的に資金繰り改善が必要な場合は、リスケジュール等の手段を視野に入れるのが良いと思います。
もし一人で解決できないときは、公庫担当者や税理士などの専門家に相談してみてください。