ファクタリングとABL(売掛債権担保融資)の違いとは?

ファクタリング ABL

売掛債権を活用した中小企業向けの資金調達方法として、最近「ABL」と「ファクタリング」という2つの方法が注目されています。

名前は聞いたことがあっても、細かい制度の内容や審査基準、手数料などまで理解されている方は少ないのではないでしょうか?

今回は、ABL(動産・債権担保融資)とファクタリングの違いをご説明します。

似たような資金調達方法ですが、内容は全くといっていいほど異なりますので、違いを理解して自社にあった方法を選べるよう知識を身につけてください。

ABL(売掛債権担保融資)とは

まずは、ABLとは何かご説明します。

一般的に、銀行等から融資を受ける場合は、土地や建物などの不動産や株式等の有価証券といった担保が必要です。

しかし、世の中には、不動産などの資産を持たない中小・零細企業も数多くあります。

そこで、通常の担保を持たない企業の借入手段として生まれたのが「ABL(アセット・ベースド・レンディング)」別名、動産・債権担保融資です。

売掛債権を担保にする場合は、売掛債権担保融資と特に呼ばれます。

売掛金や商品在庫、原材料、機械設備や農産物といった不動産以外の資産を担保に、銀行やノンバンクからお金を借りることができます

不動産担保に依存しない資金調達方法として、多くの会社から注目を浴びています。

ファクタリング(売掛債権売却)とは

ABL(債権担保融資)と似た用語に、「ファクタリング」があります。

ファクタリングは、入金サイトが来ていない未回収の売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらう資金調達の方法です。

資金繰りの悪化や急な入り用の際、「あの売掛金の入金を早められたら・・・」という経営者の悩みを実現するのがファクタリングです。

ファクタリング業者は、債権をから手数料を差し引いた金額を利用者に支払い、入金日に売掛金を受け取ることで手数料分を利益としています。

ABLが債権を担保にした融資であるのに対して、ファクタリングは債権の買取である点が大きな違いです。

それぞれの詳しい違いは次節で解説します。

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ファクタリングとABL(売掛債権担保融資)の7つの違い

ファクタリングとABLの細かい違いをご説明していきます。

違いは次の7つに分類できます。

  1. 申請から資金調達までのスピード
  2. 対象となる債権
  3. 貸し倒れリスクの有無
  4. 手数料・金利
  5. 審査の難易度
  6. 調達可能金額
  7. 貸借対照表への計上方法

少し多いですが、それぞれの内容を確認していきましょう。

違い①:申請から資金調達までのスピード

ABLは銀行や信販会社、消費者金融などのノンバンクからの融資になります。そのため、融資実行までには審査が必要となり、2週間〜3週間程度は最低でも時間がかかります。

ファクタリングの場合も審査はありますが、合否が出るスピードは早いです。特に2社間ファクタイングの場合、申請から入金まで最短1日という事業者もあります。

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売掛先への通知が必要となる3社間ファクタリングの場合は、数日から1週間程度時間がかかりますが、それでも銀行融資と比べると資金調達スピードを早いと言えます。

違い②:対象となる債権

ファクタリングは、売掛債権のみが買取が対象となりますが、ABLの場合は、売掛金に限らず、在庫や機械設備といった事業性資産など幅広い種類の資産が担保の対象になります。

違い③:貸し倒れリスクの有無

ファクタリングとABLの大きな違いの1つが「貸し倒れリスク」を誰が負うか、という点です。

ファクタリングの場合、業者へ債権譲渡した段階で回収義務は業者へ移行するため、万が一、売掛先の倒産・破産などで売掛金が支払われなくても、ファクタリング利用企業は倒産リスクを一切負いません。(利用企業が回収義務を迫られないことをノンリコースといいます。)

一方、ABL(動産・債権担保融資)の場合、売掛金が未払いだったとしても回収義務は融資を受けた企業に残ります

違い④:手数料・金利

ABLは、融資のため、融資先の金融機関へ金利を支払う必要があります。

東京スター銀行の売掛債権担保ローン(分散型)の場合、金利は2.75%と基準としており、総じて低金利といえます。

一方、ファクタリングの場合は、金利ではなくファクタリング業者へ支払う手数料がかかります。

手数料は、2社間ファクタリングの場合、売掛債権額の10〜20%程度、3社間ファクタリングの場合で、1〜5%程度です。

これは、1つ上の項目で説明した「貸し倒れリスクの所在」が関係しています。ファクタリングでは、業者が売掛先の貸し倒れリスクを負うため、仮に倒産などで回収ができなくても全体として損失が出ないように手数料を高く設定しているのです。

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違い⑤:審査の難易度

ABLとファクタリングでは、ABLの方が審査が厳しいです。

まず、両者ではそれぞれ審査のポイントが異なります。

ABLの場合、仮に売掛債権を担保にした融資を実行した際も、売掛先の信用力だけではなく、自社の信用力も重視されます

一方、ファクタリングの場合も自社の信用情報は審査基準に入りますが、金融機関の融資審査と比べると比較的審査はゆるく、また、比重としても売掛先企業の支払い能力がより重視されます

そのため、税金の滞納や債務超過の企業がABLで融資を受けるのは難しいですが、ファクタリングの場合は、審査通過の可能性があります

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違い⑥:調達可能金額

ファクタリングで調達できる資金は、売掛債権の金額が上限になります。

実際には、債権額の8~9割程度が買取上限価格となり(金融用語で「掛け目」と呼びます。)、さらに、そこからファクタリング業者への手数料を差し引きます。

実際の調達額は、債権額の7〜8割程度を目安に考えると良いでしょう。

一方で、ABLでは上限金額は決まってなく、個別のケースごとに設定されます。

売掛金を保有している会社の信用力が高ければ、売掛金額以上の融資を受けることも可能です。

違い⑦:貸借対照表への計上方法

会計上、ABLで得た融資金額は、「負債」に計上されますが、ファクタリングは借入ではないため、資金調達で得た金額は「負債にはなりません」

貸借対照表上で負債とならないので、将来的に金融機関から借入を行う際も審査で不利にならない点はファクタリングのメリットといえます。

ファクタリングとABL(売掛債権担保融資)のメリット・デメリット比較

ファクタリングとABLのメリット・デメリットをまとめました。

表は右へスクロールできます。

メリット デメリット
ファクタリング
  • 最短即日現金化
  • 償還請求権がない(貸し倒れリスクがない)
  • 未回収リスクがあるので手数料が高い
  • 売掛金額までしか資金調達できない
ABL(動産・債権担保融資)
  • 低金利で融資が受けられる
  • 調達額に上限はない
  • 債権譲渡登記が必須(ファクタリングでも必要な場合あり)
  • 入金までの期間が長い

ファクタリングとABLはどっちがおすすめ?

ファクタリングとABLはいずれも売掛金を使った資金調達の方法ですが、それではいざ資金調達をしようと思い立った際はどちらを利用するべきでしょうか?

選び方のポイントは、「緊急度」と「信用状況」の2点です。

ファクタリングが合っているケース

ファクタリングは、「最短即日で入金」かつ「赤字や税金滞納があっても利用可」という資金調達方法です。

そのため、「数日以内に何とかしてお金を用意する必要がある」という緊急のニーズの場合や、「信用情報に事故がある、または赤字決算で金融機関の審査に落ちてしまう」という状況の場合は、ファクタリングの一択になるでしょう。

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ABLが合っているケース

ABLは、1年〜数年にわたる長期的な資金調達が可能ですが、審査には2週間〜1ヶ月程度の時間がかかります。

また、信用情報次第では、審査に落ちる可能性もあります。

「自社の信用情報に延滞などの事故履歴がなく、かつ決算も黒字、融資審査には影響が出ない」そして、1ヶ月程度の審査期間であれば時間的にも待てるが、なるべく早めに資金繰りを改善したいという状況であれば、まずABLを申請してみるのが良いでしょう。

ファクタリングを謳ったABLには注意

ファクタリングもABLもどちらも近年登場した新しい資金調達方法です。

正しく利用すれば、中小・ベンチャー・零細企業にとって有効な手段になりますが、新しい制度であるばかりに非合法に金を奪い取る詐欺集団も存在するため、注意が必要です。

特にファクタリング業者は、貸金業に当てはまらないため、現在は業者になるための厳密なルールは存在しません。誰でもなろうと思えばファクタリング業者になれる状況なのです。

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昨今、ファクタリング業者を名乗る集団が、企業へ法外な金利で金を貸し出し、出資法違反で逮捕される事件等もありました。

これはファクタリング業者の名を使っていましたが、実質は売掛債権担保融資を行なっていた事例です。融資を行うためには貸金業者への登録が必要なので、「ファクタリング業者が融資を行えない」を理解しておいてください。

もし融資を受ける際に、相手が正式な貸金業者か怪しいと思ったら金融庁の登録貸金業者情報検索サービスで、貸金業への登録がされているか調べてみるのも1つの手です。

ファクタリングとABLの違いまとめ

今回は、ファクタリングとABL(債権担保融資)の違いやそれぞれのメリット・デメリットを解説しました。

いずれも売掛金を利用した資金調達の方法ですが、その内容は大きく異なります。どちらの制度を利用するべきかは、利用する時のシチュエーションなどによります。

どちらを検討するべきか悩んだら、資金調達に強い税理士などに相談してみることをおすすめします。

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