日本政策金融公庫に審査落ちする9つの原因とは?

日本政策金融公庫の融資制度は、これから創業を迎える方から立ち上げ間もないベンチャー・中小企業まで、小規模事業者を中心に大変重宝されています。

民間銀行に比べて小規模事業者でも事業資金の融資が受けやすいのが特徴ですが、中には審査落ちてしまう会社もあります。

今回は、日本政策金融公庫で審査に落ちる理由と落ちてしまった時の適切な対処法をご説明します。

これから融資を受けようと思っている経営者・個人事業主の方から、公庫の融資に落ちてしまった方はぜひ本記事を参考になさってください。

日本政策金融公庫の審査に落ちる9つの理由

日本政策金融公庫(国金)の審査に落ちてしまう理由は様々ですが、代表的なものは以下の9パターンです。

  1. 希望額に対して自己資金が少ない
  2. 個人の信用情報に問題がある
  3. 税金を滞納している
  4. 公共料金の支払い遅延がある
  5. ノンバンクやキャッシング等の債務がある
  6. 事業計画書・創業計画書の出来が悪い
  7. 面談で失敗してしまう
  8. 売上が上がっていない
  9. 代表者の数字に対する意識が弱い

詳細を解説します。

審査落ちの理由①:希望額に対して自己資金が少ない

融資希望額に対して、自己資金が少なすぎる場合、謝絶の可能性が高まります。

「でも自己資金要件無しの制度もあるんじゃないの?」思う方もいるかもしれません。

仰る通り、例えば、創業融資では、新創業融資の場合「自己資金要件が希望額の10分の1以上」。中小企業経営力強化資金は「自己資金要件なし」となっています。

しかし、上記の数値はあくまで表面上の条件であって、実際は自己資金要件はかなり重視されます。

自己資金100万円で1000万円の融資を希望することは、申請自体は問題ありませんが、実際は審査落ち濃厚または減額可能性大と認識しておきましょう。

現実的には、融資希望額の半分以上の自己資金があると希望額での通過率が高くなります。

審査落ちの理由②:個人の信用情報に問題がある

日本政策金融公庫の融資審査では、CIC情報を必ずチェックされます。この時、個人の信用情報に傷がある(いわゆるブラックリスト)の場合、審査通過が難しくなります。

実績が少ない企業の信用を担保するのは、代表者本人の信用です。たとえ無担保・無保証の制度であったとしても代表者本人の信用が融資可否を決める重要要素なのは変わりません。

CICの履歴は、債務整理、自己破産などの理由によって5年〜7年間情報が保存されます。過去にブラックを示す「異動」がついた方でも5年〜7年以上経過していれば、情報が消えているので融資の申請は可能です。

自分の現在の信用情報が知りたい方は、以下で信用情報の開示請求手順をご紹介しています。合わせてご覧ください。

【関連記事】信用情報の開示請求手順を説明!情報開示するデメリットはある?

審査落ちの理由③:税金を滞納している

所得税・消費税・法人税・住民税などの税金を滞納している場合もNGです。

税金滞納を続ければ、強制執行になり、会社の財産は全て税金支払いに充当されます。

国の法律によって、租税は最優先で支払うべきものとされているので、貸し手(公庫)としては融資回収の可能性が極めて低くなるということです。

現在、税金を滞納している方は以下の記事が参考になります。

【関連記事】税金滞納で融資審査が通らない時の資金調達方法まとめ

審査落ちの理由④:公共料金の支払い遅延がある

日本政策金融公庫の融資申請時には、直近6ヶ月分の公共料金の支払い明細書や領収書、引き落とし口座通帳の提出を求められます。

これは、電気・ガス・水道や携帯電話料金などの事業運営に最低限必要な固定費を遅延する人は、融資返済もしてくれないだろうという判断ができるからです。

審査落ちの理由⑤:ノンバンクやキャッシング等の債務がある

公庫以外から借入・債務がある方は、否決の可能性が高くなります。

他社からの借入に関しては、CIC情報を見れば確実にバレるので隠していても意味がありません。

他社借入はそもそもの返済能力を疑われたり、既存の債務を公庫に借り換えしようとしているのでは、と思われたりしてしまいます。

他に借金がある方は、返済を終えてから公庫に申請するのが無難でしょう。

審査落ちの理由⑥:事業計画書・創業計画書の出来が悪い

数字の根拠が弱かったり、現実的ではない事業計画書や創業計画書では審査通過が難しいです。

数字だけいじくり回すのではなく、その数字を裏付ける根拠をしっかりと提示する必要があります。

公庫担当者からすれば、計画書の根拠が弱ければ返済可能性も薄まります。

書類作成が不安な方は、融資に強い税理士などの専門家にサポートを依頼するのも1つの手です。

審査落ちの理由⑦:面談で失敗してしまう

申請書類の提出後に実施される担当者面談で失敗してしまうケースです。

そもそもラフすぎる格好で行くことで人間的にマイナス評価を受けてしまったり、事業計画書と面談内容の整合性が無かったりすると、審査通過が厳しくなります。

もちろん、公庫担当者も数々の経営者面談を行なっているので、単に緊張で上手く話せないのであればきちんと配慮してくれる場合も多くあります。

しかし、「計画書の内容を覚えていない」など致命的なミスは審査への影響大です。

【関連記事】日本政策金融公庫の面談でよくある質問と回答のコツ【事前対策】

審査落ちの理由⑧:売上が上がっていない

創業後数ヶ月の法人から設立数年の会社の場合、創業前の融資申請と違い、それまでの業績も審査の指標になります。

そのため、業績が著しく悪い、数ヶ月間赤字続きという場合は融資実行が困難になります。

ケースによっては、融資以外の資金調達方法を検討してみても良いでしょう。詳しくは以下の記事で解説しています。

【関連記事】赤字や債務超過中でも資金調達できる6つの方法

審査落ちの理由⑨:代表者の数字に対する意識が弱い

経営者の数字に対する意識(計数観念)は、公庫内部で重要視されている指標の1つです。

会計処理や試算表作成を全て代表の奥さんや税理士に任せていて、「数字のことは税理士に聞いてくれ」などという代表は、かなりのマイナスイメージを与えてしまいます。

少なくとも毎月のキャッシュフローや数ヶ月後の資金繰りについては具体的な数字を自分で把握しておきましょう。

日本政策金融公庫の審査に落ちた時の対処法とポイント

日本政策金融公庫の審査に一度落ちても再チャレンジは可能です。ここでは再チャレンジをする場合のポイントを解説します。

ポイントは、4つです。

  1. 再申込は6ヶ月後に行う
  2. 100万円程度の少額から実績を積む
  3. 自己資本比率を増やす(見せ金はNG)
  4. 融資の専門家である認定支援機関を利用する

ポイント①:再申込は6ヶ月後に行う

まず再申請は半年以上経過してから可能になります。

前回審査落ちした原因を分析し、改善するための期間として活用しましょう。

例えば、創業前に申請して否決された場合でも6ヶ月の間で売上を伸ばしていれば次回の通過確度は上がるでしょう。

ポイント②:100万円程度の少額から実績を積む

融資の通過率をあげるためのコツは、まずは少額からスタートするということです。

まずは少額で融資を受けて、しっかりと返済すること。滞納なく完済すれば、日本政策金融公庫内での評価が高まり、融資限度額はどんどん上がっていきます。

いきなり1,000万円以上の大型融資を実行しようと思えば、自己資金が十分にあり、綿密な事業計画があり、、とハードルが上がります。

少額からコツコツ信用を貯めていけば、数年後には1,000万円の融資も十分可能性があります。

ポイント③:自己資本比率を増やす(見せ金はNG)

自己資金が少なすぎる理由で審査に落ちてしまった方は、次回までに自己資本比率を高めておきましょう。

ただし、それまで全く貯金が増えてなかった人が、申請前にいきなり口座に数百万円入金されるなどの見せ金は基本的にNGです。

一番は、自分で毎月コツコツ貯金をしていること。

しかし、タンス預金で貯めていたのでといった理由では見せ金と疑われかねません。貯金は必ず銀行口座に振込で行いましょう。

もし時間が間に合わなければ、生計を共にする結婚相手からの借入などは一定の効果があります。

ポイント④:融資の専門家である認定支援機関を利用する

融資実行確度をあげる一番の方法は、認定支援機関と呼ばれる税理士や会計士のサポートを受けることです。

  • 認定支援機関とは

中小企業や小規模事業者の経営相談、資金調達支援等を受けられる公的な支援機関。商工会議所や金融機関、税理士、弁護士、公認会計士などが認定されています。

資金調達関係の相談は、融資に強い税理士にするのがおすすめです。

融資に強い認定支援機関は、申請書類の作成や面談サポートを行い、融資申請を全面的に手伝ってくれます。

公庫で審査落ちした人でも活用できる資金調達手段はある?

結論、公庫に審査落ちしてしまった人でも利用できる資金調達手段は多数あります。

ここでは、中小・ベンチャー企業や個人事業主が利用できる主な調達方法を4つご紹介します。

  1. ビジネスローン
  2. ファクタリング
  3. VCや個人投資家からの出資
  4. クラウドファンディング

①:ノンバンクのビジネスローン

クレジットカード会社や信販会社、消費者金融などのノンバンクが提供している事業者ローンを活用する方法です。

日本政策金融公庫と比べると、審査基準はゆるいので審査に落ちてしまった方でも利用可能性があります。

事業者ローンとして有名なのは、1万円から1,000万円までの最短即日融資が利用できる「AGビジネスサポート」です。(※お申し込みの受付時間・混雑状況により、日数がかかる場合があります。余裕をもってお申込みください。)

無担保・無保証で利用ができ、来店不要で契約できるので気になる方は公式HPをチェックしてみてください。

②:ファクタリング

支払い期日前の売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらうことで現金化する方法です。

法人相手の売掛債権(請求書)があれば、法人だけではなく、個人事業主でも利用できます。

審査時は、利用者の属性ではなく売掛先の返済能力が基準になるので、「信用ブラック」「税金滞納」「赤字決算」いずれに該当する事業者でも活用できるのがポイントです。

ただし、実際に現金化できる金額は、売掛金の額よりも10〜20%低くなるので注意が必要です。

シチュエーションとしては、「急ぎで運転資金を確保したいが、ローンや融資が通らない」といった方におすすめの方法です。

気になる方は、一度手持ちの売掛債権が買取可能かファクタリング会社へ無料見積をしてみても良いと思います。

【おすすめファクタリング会社】

  1. ビートレーディング
  2. アクセルファクター
  3. ファクターズ

上記の3社はファクタリング会社としての実績も豊富で信頼できる会社です。
可能であれば、3社へ無料問い合わせしてみることをお勧めします。

とくにビートレーディングは、審査通過率95%以上で、業界でも有名なファクタリング会社です。急ぎの方は一度公式HPを確認してみると良いと思います。

③:ABL(売掛債権担保融資)

ABLは、売掛債権担保融資のことで、売掛債権を担保にして銀行やノンバンクからお金を借りることです。

売掛債権の売却であるファクタリングと似ていますが、ABLは融資なので売掛金額以上の資金を調達することができます

ファクタリングとABLの細かい違いは以下で説明していますので、良ければチェックしてください。

【関連記事】ファクタリングとABLの違いは?2つの資金調達方法を比較!

④:VCや個人投資家からの出資

借入が難しい方は、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から出資を受けることも視野に入れてみても良いでしょう。

VCやエンジェルの場合、今すぐに事業が成り立っていなかったとしても将来的に成長が見込まれるビジネスモデルであれば調達が実現する可能性があります。

また、様々な成功モデルをみてきたVC担当者や元起業家である個人投資家からビジネスアドバイスを受けられるメリットもあります。

調達までには数ヶ月程度かかることもありますので、早めから情報収集を始めておくことをおすすめします。

【関連記事】エンジェル投資家マッチングサイトおすすめ比較【2019年版】

⑤:クラウドファンディング

クラウドファンディングでは、企業や個人が掲げたプロジェクトに共感・賛同してくれた不特定多数の人々から資金調達を行います。

そのため、その会社の決算状況や経営者の信用情報に関わらずに実施できます。

寄付型・購入型・貸付型など様々な種類のクラウドファンディングがあるので、自社のビジネスやプロジェクトに合ったものを選ぶと良いでしょう。

デメリットとしては、必ず資金調達できる保証がないこと、また資金が集まるまでにどれ位の期間がかかるか分からない点です。

急ぎで事業資金が必要な会社では不向きですが、社会性の高いビジネスや革新的なビジネスを手がけている会社はチャレンジしてみる価値はあるでしょう。

日本政策金融公庫に審査落ちする原因と対処法まとめ

今回は日本政策金融公庫の審査に落ちる理由と落ちた場合の対処法について解説しました。

日本政策金融公庫の融資は、企業自身で申請を出すこともできますが、公庫の社内決裁の仕組みや担当者との関係性等も審査に影響してきます。

そんな時には、認定支援機関と呼ばれる専門家のサポートは頼りになると思います。

ただし、認定支援機関によって得意ジャンルは異なります。探す際には、「日本政策金融公庫 認定支援機関 (エリア名)」などで検索をしてみるとお近くの融資に強い認定支援機関が見つかると思います。

一度公庫審査に落ちた方も諦めずに次のチャレンジに向けて本記事を参考に準備を進めていただけると幸いです。